祈りの灯

 
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植月さんの灯


Text : Suzuki Takahisa


植月さんの灯をはじめてみたのは、haruka nakamuraさんの「12月のカーテンコールⅣ」の京都公演だったと思う。もう3年ぐらい前だろうか。ちょうどLUCAさんと会ったのもその時で、個人的にも思い入れの深い公演だった。ハルカさんたちがPIANO ENSEMBLEを終え、次の章へのはじまりだった演奏会。音源では感じ取れない燃えるような演奏の時間だったことを今でもはっきりと覚えている。その演奏会の時にはじめて植月さんの灯が空間を灯し、昨年のカーテンコールⅤの公演でも同じく植月さんの灯が空間を灯していた。


岡山の吉備中央の集落でひとり、木を削り作品をつくり続ける植月さんが灯の作品を発表したことは過去にも少なく、木と紙粘土を使った、この灯の作品は一度足りとも展覧会で発表したことはなかった。

和歌山のnormさんで行われた植月さんの展覧会「veil」に、「12月のカーテンコール」で使用された3mを超える照明作品がはじめて飾られる。それは、植月さんの展覧会の千秋楽とnormさんの3周年を祝うために企画されたharuka nakamuraさんとLUCAさんの演奏会のために設置されたものでもあった。しかし、演奏会はまぼろしとなってしまう。それでも、ハルカさんや植月さんの計らいで、「veil ; まぼろしの演奏会」と題して、ハルカさんとLUCAさんの二人で描いた楽曲付きの植月さんの作品がnormさんの3周年を祝うカタチとして生まれた。


「12月のカーテンコール」の時に生まれた灯の作品は、今回はじめて「祈灯」と名付けられた。たくさんの時間を旅して、ようやく1つの節目を迎えたように思う。手仕事の跡が、くっきりと刻まれた「祈灯」は植月さんの今この瞬間を切り取っているようだ。灯の下で祈る人型は、もしかしたら作者本人なのかもしれない。この先、大きな灯の作品はどこで見れるか分からないが、今回の「祈灯」の作品はハルカさんとLUCAさんの音楽と同じように、僕の日々の時間の中に溶け込んでいくのだろうと思う。そのきっかけを作ってくれたnormの坂上さんに感謝したい。植月さんの灯を灯すたびに、そこにあった音が聴こえてくる。


植月大輔「祈灯」

edition 33

作品購入特典:「veil」haruka nakamura & LUCA
(楽曲のダウンロードコード付き)

¥10,000 +tax

W120 × H333 mm
粘土 / 木
(スイッチ付き。コード長は100cm。)
※E12口金 5W電球がついています